人工言語野

地球語 Earth Language

地球語 Earth Language :アンケート

ご回答者:Yoshiko F. McFarland/マクファーランド・佳子さん
言語名:地球語

アンケートと翻訳の概要についてはこちらをお読みください


地球語 Earth Language の名前の由来・意味を教えてください

すべての地球人のための補助的な伝達手段であり、それが特定地域の文化ではなく、ヒト共通の感覚や認識要素と地球環境に基づくからです。

参考にされた言語はありますか?

直接参考にしたものでは、表音機能のために国際表音記号。
考え方を調べた言語としては、漢字、日本語、ハングル、英語、多言語の文法比較、アメリカ先住民・US・日本語の手話など多数、
そして言語よりもむしろ基礎的な科学の本や事典を参考にしました。

設計を始められた時期を教えてください

1988年から。

言語制作に至った経緯を教えてください

着想(1988年)
ろくに英語もできないまま渡米してマイノリティーの苦痛を味わう1年後、美術館で1500年前の中国人が書いた墨書の前で棒だちになりました。中国人のおしゃべりは100%わからないのに、古い墨書から中身の情景が伝わってきたのです!漢字は学ぶのが厄介ですが、視覚言語の共通語としての合理性は未来の国際交流を公平に支えることができるかもしれない!電撃的なひらめきでした。

手探り
この閃きにすでに、現地球語のコンセプトの大部分がカオス状態で含まれていました。ですが、わたしは画家で言語分野には暗く、自分で造れるとは信じられません。だれかがこの案を推進してくれないかなと思っていました。苦手な英語の世界に住み、インターネットもまだ使えないころのこと、閃きを論理にほぐす糸口を求めて日本町の図書館に通い、百科事典をくりながら手探りしました。可能性を説くには記号の具体化も必要かと、組み合わせの容易な形も研究しました。そして最初の具体案を1992年1月の北米生活情報誌『アドア』創刊号7ページ分に手書きの記号カット入りで取上げていただきました。読者からわずかに励ましの便りはもらいましたが、案の推進者・協力者は現われませんでした。考えてみれば、在米日本人は英語の習得に追われて地球語どころではないのでした。

コンピュータ
94年にはじめてコンピュータに触れ、それまでの案がコンピュータには不向きだったと悟りました。記号のしくみを機械でも手話でもより自然に使えるよう組みなおそうと、何度も振り出しにもどっては再出発しました。そして今の地球語の原案ができ、その重ね記号をマイクロソフト・ワード3.1上で入力するツールを、日本の学生、トモがプログラムしてくれて、地球語の文書作成が可能になりました。それを使い、北米毎日新聞に1997年1月から約半年間、地球語について連載し、グローバル社会を支える理想言語のあり方としくみを説きました。20年早すぎと評されましたが・・

インターネット
96年後半から、日本語版ウェブサイトを開始、翌年から辞書を引き引きで英語版も少しずつ開きました。国際表音や文法は独学だったので、欧米のいろんな分野の学生たちから間違いを指摘され、恥をかきかき教えを乞うては修正・改造を進めました。そして気が付くと、すっかりわたし自身が基礎部分の建設を進めていました。言語のしくみと自然がひとつになって感じられ、壮大な宇宙と向きあって、その中のつながりの糸をたどるのは、底知れずおもしろいのです。経済的には、ずっとホームレスへの崖っぷちを歩きながらも、地球語というテーマを得た幸せを感じています。

地球語の特徴・基本コンセプトを教えてください

1)あらゆる既存の伝統語を護り育てながら、すべてに平等に橋をかける、補助的な伝達手段:
・現在1週間にひとつの伝統言語が失われていると言われます。英語にかぎらず、どんな音声言語が共通化しても、少数言語の崩壊と伝統言語のくずれを食い止めることはできません。地球語は、伝統言語とそれらに包まれてきた地域文化を消滅から護り、それぞれに育てつづけるのを手伝いながら、各言語間に橋をかけます。

・地球語の象形文字は、幼児が母語を学ぶのを助けます。学生や社会人が新しい母語や外国語の意味や発音の仕方を修得するのも手伝います。

・現在手話や点字は、言語ごとに異なりますが、視覚を基にした多手段に展開する地球語は、世界共通に健常者と障害者の間もつなぎます。そしてだれがどこでどんな事故に出遭っても伝達に不自由しない世界をもたらします。

2)情報をコンパクトにわかりやすく整理するしくみ:
これによって、分野を越えてイメージを捉えやすく、世界を分かりやすくします。必要な区別は、時に応じて必要なだけ詳しく分別しますが、内容を察しやすい略記のしくみもあります。地球語時代の時間を超える伝達と、個人の秘密記録の使い分けも可能です。


3)地球人感覚を育てる道具:
・好む好まないにかかわらず、未来に生きる人々は、ローカルな視点だけでは暮らせなくなりました。、「自然」に基づく地球語は、利用者に「地球自然」から自分を問い直す姿勢を無意識のうちに与え、ローカルな文化も鍛えなおします。

・普及の過程で異文化間の討議や交流がふえます。地球語という中間の基準尺で互いに計りあいながら、文化によるイメージの違いや、これまで気づかなかった自分の考え方のくせを知り、国際間の理解を深めます。

・新手段とさまざまな文化の出合いが、いろんな新しいアートの開花・共鳴を誘い出します。
これらによって、グローバルな協調社会を支えようとします。

基本文字数、表記方法、現在の単語数を教えてください

基本文字数:
字母:70(数字の0と1を含む)、数字の2〜9、専用文法記号:6、 情報整理用の括弧:3組(6個)で総計90です。(そのうち50は表音記号にも兼用します)

表記方法:
・文章:1文字で意味を持つ字母や、字母を重ね合わせて造った文字を文法記号を適所にはさみながら左から右へ一列に表記

・ 表音:要素を組んで音素を表し、音素を左から右へ時間順に

・マインド・マップ:文章化する以前のイメージを記号で紙面に置いてゆき、矢印や様々な線で関係をつないで思考をとりだすのに

・地図や図面、街頭の表示用、コンピュータの共通アイコンに

*2004年夏ごろにはMS・Word2000・XP上で機能する地球語フォントと重ね入力ツールが配布可能になり、文書作成に地球語タイプをご利用いただける見込みです。Emailや盲人用の触角文字、そして音声記号は重ねられないので、その場合は、フォント(基礎文字)のみで表現する方法を採ります。

単語数:
現在GIFファイルにして字典に出している重ね文字は、2000余ですが、約束に基づいて重ね合わせて、個人的にも造語や熟語の表現を試みることができます。知人友人に、それぞれの特徴を表す仲間内の1文字ニックネームをつけるなども自由です。だから、使用可能な単語数をあえていえば、常にほとんど無限に開かれています。

制作言語の最終的な到達点・目標を教えてください

日本語に最終的な到達点なんて無いように、地球語がもしグローバルに普及できたとしても、ヒトが生きつづけるかぎり発展変化すると心得ます。それに耐える柔軟性を想いながら、基礎部分の構造と使い方を提案しています。これをたたき台に参加者を増やして、実用上で鍛えるのが今後の課題です。
前述した目的を果たし、コンセプトを満たすよう向かいます。

制作手順(文法・単語生成・など)を教えてください。

表意・表音/単語・造語/文法について(新しくウィンドウを開きます)

制作で大変なこと、難しいと思うことはなんでしょうか?

すべての記号が他とからみ合って全体を構成するので、ひとつ記号を追加・削除または変化させるだけでもその影響は全域におよびます。そのため改良のたびにものすごい労働量でした。

地球語を習得するには、どれくらいの時間がかかり、どの様な勉強方法が向いていると思いますか?

・新しい音声言語では、反復練習が必要ですが、地球語の場合には、理解し手を動かしながら一度読むと、1ヶ月後でも思い出せる場合が多いでしょう。

・はじめて知った日からいきなり、自分用に使い始めることをお勧めします。地球語サイトの字典からご自分に便利そうな文字を書き写してみます。最初は数個でいいでしょう。それを、ノートを取ったり日記をつけたり、なにかの構想を練るとき、日本語(母語)に「混ぜて」お使いください。一文字で簡単に書けて時間節約になる上、地球語が混じってると、あとで検索しやすいです。便利と分かれば、各字母の約束事と形や位置の定めを正しく頭に入れなおしてください。活用文字を増やしても、組み合わせる位置関係を間違わないためです。

・一度は手書きや手話を使いながら身体で記号を身につけることをお勧めします。体全体で文字と意味を表現する体操をしながらおぼえていただいてもいいです。

・重ね文字ツールを使ってタイプするのも面白いです。でたらめでもとにかくタイプしてみて、重ねた文字の意味をイメージしてみるという遊びは、大いに頭の刺激になるでしょう。創造につながる想像力が高まるでしょう。

・ひとり遊びしたり自分のために役立てたりしながら、気が付くと異国人や障害者との交流にも、あれれ使える!という展開は、地球語以外ではあまりないでしょうね。

・幼児や子どもに日本語のことばを教えるのに、地球語の象形文字や手話で補助すると、親子でいっしょに楽しみながら地球語も修得できます。

地球語はどの様な表現形式、使われ方に向いていると思いますか?

音声伝達では母語を使うのがだれにとっても一番です。伝統語を使いつづけて保護・成長させるため、地球語の音声伝達は、あえて便利にしてはいません。ひびきは楽しいかもしれません。

それ以外すべての表現形式に、 地球語は親切です。

  • 母語に即した語順の文章で国際交流
  • 外国のことば修得の助け
  • ビジュアルな詩
  • ピクトグラフ
  • コンピュータのアイコンや地図や街角のサイン
  • 速記ノートやマインド・マップ(イメージを線で結んで関連付ける思考法)
  • 手話
  • ボディランゲージを使ってイメージをひろげるダンスや体操
  • 意味を無視して純粋に音声を楽しむアカペラ
  • 記号の盛り上げ印刷による盲人との文書交流
  • 暗闇で声を立てない触覚を介する手話文字の伝達
  • 病床で眼球しか動かせない人からの目文字伝達
  • 個人的な秘密世界のイメージを育てる利用・・・
どの表現を採るにも、あらためて学ぶ必要はありません。

言語を作る上でのアドバイスを求められているとします。なんと答えられますか?

まずは、「なんのためにつくるの?」とたずねます。

地球語以外にも制作した言語、制作中の言語があれば教えてください。

ありません。

マクファーランドさんにとって、言語・言葉とはなんですか?

互いに「共鳴」する手段、そして内なる宇宙。

ありがとうございました。


ウェブサイトの公開日 [地球語Website]

日本語版:1996年11月、 英語版:1997年2月1日

設計者プロフィール

関西出身、1966年島根県に移住、米子の藤原一善師に押しかけ弟子入りして自然観察と自然の中での遊び方、そしてろうけつ染技術を見習い、次第に受注と個展のための制作活動を開始しました。植物の煮汁と金属液を何重にも塗り重ねて色を生む技法です。

宍道湖岸、満願寺の障壁画30余枚、レストランやホテルの壁画や暖簾などの制作をする傍ら、出雲国風土記のなかの神話時代の世界に導かれて、日本文化の一ルーツを歩いて探り、その世界を描いて中国地方で個展を多数ひらきました。地方紙にエッセーを連載したり、NHK教育テレビの歴史探訪番組のレポーター・ナレーター兼挿入画の制作などに起用されたりもしました。

山陰の人々にお世話になりながら、運命のいたずらで、考えたもしなかったアメリカ移住を決意、それまでのサーチの総決算として物語、『空の彼方からカモス』を自費出版しました。1987年に家族と別れて渡米し、そして落ち着くまでもなく、地球語の閃きに見舞われたのです。

私が出雲古代から学んだのは、結びの力についてでした。異質なものが結ばれることで新しい命や創造が花開くことに、古代びとは注目し、結びをさまざまな形にして伝承してきたのを感じていました。地球語はもしかすると、日本のルーツの神々が未来のグローバル社会を結ぼうと、私を異質な世界へ追い遣って準備させたのかもしれません。最近の言語のルーツやDNAなどの研究では、日本人のルーツもトルコあたりから発し、印欧語とさえつながるという説が浮上してきているようです。異質な文化も源をたどれば一つ、元の自然に帰れば橋はかけられる、出雲の神々は私をそう励ましつづけています。

Copyright (C) Yoshiko McFarland All Rights Reserved.
Library of Congress TX 3 214 905 (C) Yoshiko McFarland (Dec. 1991)
Earth Languageウェブサイト:
Library of Congress Txu-100-495 (C) Yoshiko McFarland (March. 2002)
このページに掲載する地球語に関する全ての権利は言語設計者に帰属します。転載・配布等はご遠慮ください。

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編者より

マクファーランドさんは「人工言語」をつくっているという風には思っていなくて、「ヒトにとって自然な要素をとりだす手伝いをしている」という感覚に近いとのことでした。「英語」主体のアメリカ合衆国で理解や協力を得るのは本当に大変だと思うのですが、協力する方達が少しずつ現れてきていて、地球語フォントと「重ね文字」タイプツール(Windows版)のリリースも間近です。もしかすると地球語は「母性原理の国」日本で育った人からしか生まれ得ない試案かも知れません。



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