クシュカ語:人工言語野

クシュカ語

クシュカ語:アンケート

ご回答者:新城カズマさん
言語名:クシュカ語

アンケートと翻訳の概要についてはこちらをお読みください


クシュカ語の名前の由来・意味を教えてください

中央アジアにかつて栄えたクシュカ帝国Kus^kan Empireで用いられた言語であるため、そのように呼ばれています。「クシュカ」の名称自体は、最近の語源学的研究によれば「馬を操る者」を指すようです。

参考にされた言語はありますか?

文法の基本はラテン語。動詞完了系の母音変化はゲルマン諸語を、人称や時制の規則性は日本語やフィンランド語などの膠着言語を参考にしています。その他ロシア語の重子音、サンスクリットの長母音などからも発想のヒントを得ました。文字については間もなく発表予定ですが、アラビア文字と(トールキン翁の手になる)テングワールから多大な影響を受けています。

制作期間について教えてください:

1998年9月25日に始まり、以後延々続いています。

言語制作に至った経緯を教えてください。

98年9月25日、たしか電車に乗っている時、それまで聞いたこともない言語の対句が唐突にうかびました。その句の文法を分析していった結果が、現在の古典クシュカ語であります。架空言語の作成自体は、小学校高学年の頃から大学在籍中までずっと続けており、社会人になってからは仕事の一環としておこなっていました。

クシュカ語の特徴・基本コンセプトを教えてください。

トールキンのエルフ諸語が不死の民に相応しく美麗にして詩的であるとすれば、クシュカ語は定命の戦士たちの言葉、転輪経典を護る騎馬民族のための荒々しく伶俐で簡素な言語を目指しています。

クシュカ語の発音について。
日本の読者/利用者の皆様にも発音しやすいよう母音は五つ(半母音などを除く)で中間母音などはありませんから、そこのところは日本語的であるとも言えます。
アクセントは強弱によってあらわされ、後ろから二つ目の音節が長い場合そこにアクセントが置かれる(短い場合は後ろから三つ目の音節)ので、おそらく実際に発音した場合はかなりラテン語に近くなるのではないでしょうか。ただ、アラビア語風の有気音も発達しており、最近はロシア語風の重子音に関する設定も充実させつつあるので、次第にそちらへも接近するものと思われます。

ちなみに以前、インターネットの自動翻訳サイトのおまけ機能を使って「どの言語にいちばん似ているか」を調べてみたら、スロヴァキア語っぽいと判定され たことがあります。

基本文字数、表記方法、現在の単語数を教えてください。

文字は現在のところ、子音28文字、母音が27文字です(二重子音・二重母音・半母音など含む)。表記は左から右へ横書き。単語数は(散歩執事君によれば)約1200語だそうです。動詞から派生可能な分詞(=形容詞)を全て個別に数えれば、さらに多くなってしまうでしょうが。

制作言語の最終的な到達点・目標を教えてください。

創り続けることです。

制作手順(文法・単語生成・など)を教えてください。

最初の頃は、頭の中に浮かんだ文章を解析して文法を抽出していました。その後、文法を整備しているうちに印欧語族に属するものと「判明」したためそちらの勉強を始めました(この仮説はその後、半ば否定されることになります)。最近は、祖語を同じくする幾つかの姉妹言語(天騎語、ナーユ語、戦闘天女語など)を創りつつ、クシュカ語族全体の語源を解き明かしています。

作る上で大変なこと、難しいと思うことはなんでしょうか?

初期に創った単語が、だんだんと今の自分の趣味に合わなくなったり文法規則と食い違ったりして、あとから「上塗り」して辻褄をあわせねばならないこと、でしょうか。しかし、その辻褄合わせがまた架空言語作成の醍醐味でもあるのですが。

クシュカ語を習得するには、どれくらいの時間がかかり、どの様な勉強方法が向いていると思いますか?

文法はそれほど難しくないので、派生語や例文をじっくり眺めていればそのうち解るようになる……のではないでしょうか。というよりも、文法を「学ぶ」のではなく「解き明かし」てほしい、というのが作成者としての希望なのです。ちょうど僕自身が子供の頃、トールキンの創った地名や人名をじっと眺めて、そこに幾つかの規則を発見し、狂喜乱舞したように。

クシュカ語はどの様な表現形式、使われ方に向いていると思いますか?

短い碑文や警句、箴言、祈祷の言葉、仏典の翻訳……等でしょうか。長い叙事詩も書いてみたいとは思いますが、韻律の形式が難しいので四苦八苦しております。

言語を作る上でのアドバイスを求められているとします。なんと答えられますか?

「実在の言語に興味を持ち、山ほど学んでください。一角獣を見つけるためには、まず馬の習性を知らなければなりません」

クシュカ語以外にも制作した言語、制作中の言語があれば教えてください。

現在作成中のものは……クシュカ語族の祖語と古語。古典クシュカ語とは姉妹関係にあるエルン語、ジェッサ語、天騎語(とその亜種)、ナーユ語、戦闘天女語。クシュカ語に影響されたアルタイ語系のナウク語(これは後に時念宗の用いる文語となり、中世日本語と融合します)。小説シリーズ『ジェスターズ・ギャラクシー』に登場する犬戎語。かつて作成していたものは……小学校高学年から大学在籍中の頃は、サンスクリットをモデルにした屈折語などを主に創っていました。

新城さんにとって、言語・言葉とはなんですか?

「賜物Gift」です。

ありがとうございました。


ウェブサイトの公開日 [Website]

1999年前半

設計者プロフィール

新城カズマ・・・小説家、古書蒐集家、言語愛好家。生年不詳、没年未定。主要著作に「蓬莱学園」『マリオン&Co.』「狗狼伝承」「浪漫探偵・朱月宵三郎」「ジェスターズ・ギャラクシー」『星の、バベル』「イスベルの戦賦(うた)」等(「」はシリーズもの)。趣味は散歩・架空言語作成・エンガチョ研究・水路地探索・ラテン語・自転車・長いあとがき。柳川房彦(有限会社エルスウェア代表取締役)の名義でゲームデザイン・書籍編集・翻訳・架空世界設定作成などもおこなう。

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このページに掲載するクシュカ語に関する全ての権利は言語設計者に帰属します。転載・配布等はご遠慮ください。

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編者より

新城さんが描かれている世界では独自の文化に交えて創作世界中でのローカル言語がたびたび登場します。小説の「あとがき」でも発音について言及されていたり、言葉への愛情が物語やキャラクタと同じくらいに伝わってくるのです。創作言語が文化設定をより豊かにし、異世界の空気感を伝える演出装置として働いていると云うことは言うまでもありません。でも、物語をつくりながら言葉も構築するというのがどれくらい大変なのか全然想像がつきません。



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