人工言語野

ICO

SCE「ICO」PlayStation2 公式サイトhttp://www.i-c-o.net/
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ICO −霧の城−
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ICO −霧の城
宮部みゆき(著)

リンクするふたり

ICOのスケッチ

主人公とヒロインの二人だけで物語が進行し、交わす言葉が限られていることもあり、創作言語が効果的に使われています。主人公とヒロインは言葉が通じないという設定です。

角が生えている事が理由で生け贄として城に連れてこられた少年イコ(主人公)。彼が城内に幽閉されている少女ヨルダ(ヒロイン)と出会うところからこの物語は始まります。序盤からすべての会話が創作語によって交わされ、日本語字幕が理解を助けます。一回目のプレイ時、ヨルダの言葉には日本語字幕はつきません。ヨルダが喋ると、異国の象形文字が字幕として現れます。
このゲームは会話の理解度がプレイに影響しません。むしろ分からないままの方が良いとさえ思います。本編で彼らが喋る言葉は、もしかするとどこかに存在しているのかも知れないと思わせる架空の世界を程良く演出しています。

ヨルダ語フォント

ICO語

日本語をベースにオリジナル言語を作っている様に聞こえます。バックワードや、漢字の音読みを使用している箇所があります。バックワードは古典的な人工言語制作手法の一つで、スペルを逆にすることで単語を作ることを言います。簡単に言えば逆さ言葉ですが、アルファベットの場合は全く異なった音(または文字の並び)になるので暗号にも使用されていました。余談ですがビートルズやレッドツエッペリンの曲中に使用されたとも言われています。

 オリジナルの言葉を創る人たちはこんなにいる
 オリジナルの言葉にまつわるゲーム

 言語作成ツール


バックワードの場合、日本語を一度アルファベットに分解してから行うと全く異なる単語が現れます。平仮名を逆さにしても良いのですが、これはすぐバレてしまいます。

(例文)君たちがいて、僕がいる

例1)アルファベット分解

Kimitachi ga ite boku ga iru.(原文)

Ihcatimik ag eti ukob ag uri.(単語ごとにバックワード)

例2)平仮名分解

きみたちがいてぼくがいる(原文)

るいがくぼていがちたいみき
Rui ga kubo tei ga chitamiki.(文をまとめてバックワード)


さて、ゲーム中繰り返し出てくる「SOU(SO/SON?)」という単語は「あなた」を指しているのかも知れません。イコとヨルダの母は同じ言語を喋っているのですが、ヨルダは少し違います。

下記の様な違いです。

1.イコとヨルダの母の言語:文法規則がある人工言語
2.ヨルダ:バックワードを元にした人工言語

イコとヨルダの母はインド・ヨーロッパ語族的な文法(S+V+O)を使用しているかもしれません。これは、二回以上繰り返して出てくる単語のうち目的語と思われる単語が最後に来るケースが多いからです。また「sei」という語は英語でいうbe動詞の様な働きを持っているかも知れません。


ICO語の会話

イコとヨルダの会話から(彼らが出会う場面)

〜イコ(主人公)が檻に幽閉されているヨルダ(ヒロイン)を発見して〜

イコ:

「 だれ?だれかそこにいるの? 」
Tsueigyo? Tsueigyo u'kowa?

「 なにしてるの?そんなところで 」
Na suigo? O'suijeu(n).

「 ちょっとまって、今おろしてあげる 」
O'taiggu(k). Onzai ga.〜ヨルダを檻から解放してから〜

ヨルダ:

「 あなただれ? 」(バックワード)
Erad at ana?

「 どこからはいってきたの? 」(バックワード)
1.Okovara Kagetti o tik?(聞こえ方)
2.Doko kara haitte kita no? (日本語をローマ字に)
3.Okod arak ettiah tik on? (2をバックワード)
4.Okodara kettiah no tik? (3を並び替えて聞こえ方に近づけたもの)

イコ:

「 ぼ、ぼくイケニエなんだツノがはえてきたから」「 ツノがはえている子供はここにつれてこられるんだ。」
u (o),Sai sei sha, Koburan sei yu.
Konn kang sei tea, Sou shi gaigai sei, Iirei ton jan.

「きみもイケニエなの?」
da(?),(sai) sei sha?

*イコの言葉はヒアリングをしただけなので、正確ではありません。
高いところでぼーっとしない

通じないジレンマ

このゲームに興味が持てない人は多いと思います。
たとえばコミュニケーションのジレンマを感じることが無い人にとって、このゲームはダラダラと続く平坦な階段を歩いている様な感覚を覚えるはずだし、多くのゲームをやった人にとって、謎解きは難解ではないし物語もそれほど奇抜じゃない。
初版でそれほど売れなかったのに、今でもジワジワとそのファンを獲得している理由は何割かの人が抱える「コミュニケーションへのジレンマ」「もどかしさ」を演出しているからだと思います。
言葉が通じない、舞台や状況も最後まで謎に包まれたまま。結論はあらゆる側面でぼんやりとしています。それでも「言葉の通じない者同士が、時には協力し、時には助けられて、最後は出口を見つける」という明快なセオリーが貫かれているから、終わった後に深い印象を残すのだと思います。(ブラック)


無力さ?

これだけ言葉や情報が氾濫している環境に身を置いていると、「言葉には意味が無いなあ・・・」なんて思うことがあります。そういう人は言葉が言葉としての機能を失っていることを、それとなく感じながら生活しているのかも知れません。
言葉が分からない時、色々な想いを感じ取ろうと私たちは努力します。最初から放棄することもあります。でも、基本的には理解されたいし、出来れば人に理解されたいと願っています。私は思います。言葉を信じられなくなった人は、誰よりも理解したい、理解されたいという気持ちが強いのだと。そんな人はこのゲームをやってみるといいかも。結論は何も出てきませんし、答えも見つかりません。ただ、言葉の無力さから一瞬だけ解き放たれる体験が出来るかも知れません。(み)

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